「焼いも」って美味しいですよね。好きな方多いと思います。買ってきても美味しいですが、自分で焼き立てを作りたくて、調べてみたら、研究されている方がたくさんいらっしゃいました。甘味を引き出すためには調理温度をコントロールする必要がありそうなので、低温調理器を使って、おいしい焼いもづくりにチャレンジしてみたいと思います。
低温調理の詳細については
焼いもが甘くなる仕組み
いくつかの大学の研究論文も読んでみました。う~ん 奥が深い。理解したポイントは「加熱によって、さつまいも が 糊化(こか)し、そのときに生成されるアミロースに酵素( βーアミラーゼ) が働いて、マルトース(麦芽糖)に変化して 甘くなる」という仕組みのようです。さつまいもはβーアミラーゼが多く含まれているので、うまく引き出せば「あま~い密のあふれる焼いも」が楽しめるということです。
ただ、少し矛盾がありました。糊化はさつまいもの場合76℃くらいから始まり81℃で止まるようです。βーアミラーゼは75℃が一番良い温度で85℃になると失活します。糊化によってできるアミロースにβーアミラーゼが働くので、まず糊化させる必要があります。76℃~81℃が狙いの温度になりそうで、βーアミラーゼの最適温度に近い76℃が良さそうに思いました。
一方で、糊化には植物細胞壁に含まれるペクチンの硬化と軟化が影響するようです。ペクチンは80℃以下、特に60℃~70℃で硬化します。野菜が生より硬くなってしまいます。軟化するのは90℃ぐらいから早まるようです。
ん?「糖化」は75℃が最適温度、「糊化」が76℃で、ペクチン「軟化」が90℃? でも現象は「軟化」「糊化」「糖化」の順番で発生させたい。温度上昇と事象の発生させたい順番が逆です。
あ~これがたくさんの方々が、いろいろ試している原因なのか、と一筋縄ではいかないだろうことを予感しました。

さつまいもを選ぶ
筆者は買ってきた「さつまいも」がすぐに美味しい焼いもになると思っていましたが、さつまいもって少し寝かせる方が良いんですね。妻からまだまだだなという視線を受けながら、野菜室にさつまいもを収め、しばらく待つことに。これもβーアミラーゼの量を増やすために必要な工程なのでスキップしない方が良いということを学びました。
さて、さらに、さつまいもの種類で、焼いもの仕上がりが「ほくほく」「しっとり」「ねっとり」と違ってくるということで、蜜のあるれる「ねっとり」が楽しめるさつまいもを調べてみました。
「安寧芋」「紅はるか」この辺りが人気が高い「ねっとり」系代表のようです。「紅はるか」は安寧芋をはるかに超えるという意味ということで、その志にひかれて、ターゲットのさつまいもは「紅はるか」に決めました。旬が12月~1月ということで、2月のいま、少し旬を外してしまっていますが、まずはスーパーに探しに行こうと思っていたら、我妻が「買っていたよ」とすでに寝かせてある「紅はるか」をくれました。
妻は私の好みと何か焼いも関連調べているなという雰囲気から旬のうちに、取り寄せてくれていたようです。う~ん。結構関連する論文読んであれこれと調べてたどり着いたのに…。最初から妻にアドバイスを求めれば良かった。すごいですね。奥様達の経験値と感は。いつもありがとうございます。m ( _ _ ) m
実験開始

イメージしているのは、この写真のような「ねっとり」系で蜜があふれた焼いもです。
甘くなる仕組みを調べたときに、難しそうな感じがしたので、「紅はるか」を使う前に、スーパーで買ってきた別のさつまいもで実験してみることにしました。

今回は低温調理器でどこまで行けるかを試してみました。
まずは、たわしでさつまいもを少し擦りながら、どろを落としてきれいにします。

低温調理での成功例で、80℃と95℃の組み合わせで美味しい焼いもができる例があったので、ちょっと仕組み調査の結果と違いますが、今回は80℃で90分加熱した後に、90℃で15分加熱する方法にトライしました。

出来上がったら、メイラード反応も狙いつつ、バーナーで少し炙って雰囲気を出します。焦がさない程度の距離で炙ると、皮がぷくっと膨らむのが分かると思います。それを丁寧に続けていきます。

いよいよ半分に切ってみました。
色と、ねっとり感は、そんなに悪くありません。熱熱ですし、スプーンですくって食べたてみると美味しいです。
が妻の反応から100点には届いていませんでした。残念ながら、普通に美味しいというレベルです。まだ蜜があふれる感動レベルにはなっていません。
確かに、今回は80℃で加熱したので、糊化が十分でなく、その結果アミロースが生成が足りずに甘味が十分に引き出せなかったのかもしれません。次回は「軟化」「糊化」「糖化」の順に変化を起こすことを目指して、温度と時間を調整したいと思います。
ただ、スイーツとしてではなく、サラダや料理の付け合わせには丁度良い仕上がりだったと思います。今回試した方法も悪くはありません。がさらなる高みを目指して精進したいと思います。
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